病院を温かな空間に。患者さんを対象にしたアートプログラムを実施しています。

ホスピタルアート実践レポート05 ~雨、のち晴れ~

ホスピタルアート実践レポート05 ~雨、のち晴れ~

私達のホスピタルアート活動は、病院のリノベーション・プロジェクトに加え、患者さんや病院職員対象のアートプログラムも行う。
その1例に、NTT東日本関東病院精神科作業療法との共同プログラムをご紹介したい。

それは病院とNPO団体が、医術と美術の専門分野を互いにカバーし合いながら共同で行う希な活動といえる。気分障害や統合失調症、痴呆症や摂食障害など、症状の様々な精神神経科の入院・通院患者さん対象に、作業療法の一環でアートプログラムを毎月行い、2年になる。プログラム終了毎に作業療法士の岡崎渉先生から精神病の特別講義も頂いてきた。そして、人一倍真面目で繊細であるがゆえに、何らかの精神疾患を抱えざるをえなかった方々を知り、隠れた芸術家に出会い、彼らの新鮮な作品にいちいち感動してきた。

例えば、元ジャズミュージシャンの男性は、紙の上にも天才的なインプロビゼーションを奏でた。チャーミングな女性は、まるで指先から花を咲かせる様に色を巧みに操った。ずっと身を硬くして動かなかった自閉傾向の男性が初めて描いた時の、内に充満したエネルギーも印象的だった。彼はまるでゴッホの如く、強く情熱的に表現した。また知的で清楚な女性は、具象的な描写力が抜群で、いつも彼女の周りには賞賛のため息がこぼれた。

そして大切な思い出もある。若い男性がやけ気味に描き終えた濃紺の絵。何かと聞くと、「どしゃ降りの雨。急に降られてどうしようもない。人生何度かあるでしょ?こんなこと。」その彼が最後にもう一枚描いた絵が、紙一面の黄色い太陽。それはまるで、人生を前向きに切り替えようとする「雨、のち晴れ」に思えた。

アートで患者さんに心やすらぐ時間を提供したいと始めた活動が、気づけば繊細で心優しい人々に私たちが癒され、教えられていることも多いのだ。

Wonder Art Production/Hospital Art Lab.
代表 高橋雅子

月刊「病院」(医学書院)2005年11月号掲載

 
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