病院を温かな空間に。患者さんを対象にしたアートプログラムを実施しています。

ホスピタルアート実践レポート11 ~ARTの効用~

ホスピタルアート実践レポート11 ~ARTの効用~

「いつかぜひ、うちの病院にも来てください!アートのようなものが必要なのです。」
と熱く語ったのは、宮城県角田市にある仙南病院の本多正久院長先生であった。
地域医療、高齢化、医療制度といった難問に日々直面し、改善の糸口がつかめそうな現場へはどこへでも飛んで行く、求道精神あふれる先生だ。
昨年、済正会栗橋病院で行われた私たちのホスピタルアート活動に見学、参加してくださったのが最初の出会いだった。

それから半年後の今年3月、私たちは仙南病院へ赴くこととなった。関連施設を含め3ヶ所で、人形制作のアートプロジェクトを実現したのだ。
最初に実施した仙南中央病院は精神病院で、統合失調症や認知症、知能遅滞の患者さんが多かった。初めは一様に無表情の参加者24名は手を動かし始めると熱中し、制作の過程でそれぞれ自由闊達な個性が見えてくる。あ ちらこちらで明るいおしゃべりと笑い声が聞こえ、参加者の顔は生き生きした表情に変わっていった。

続いて実施した高齢者施設はくあいホームと仙南病院は、いずれも高齢者ばかりで区別がつかない。地域の病院は高齢化社会の縮図の様だ。こちらの参加者は無表情と無反応が一段と重症で、すべてを諦め放棄しているような人も多かった。しかし眠りから覚醒するように、徐々に参加者の人格が浮かび上がり、目に光がよみがえるのを感じた。ずっとまどろんでいた男性が若い時の渡米体験を話し出したのも印象的だった。そうなると、もともと和裁の素養や経験がある方々だけに、こちらが教えていただく立場に逆転し、祖父母の傍にいるような不思議な温かさも感じるようになっていた。
自分の手を動かし、どう作るか頭と感性を使うこと。そして人との交流と刺激があることの効果がたった2時間で確認できた気がした貴重な体験だった。

Wonder Art Production/Hospital Art Lab.
代表 高橋雅子

月刊「病院」(医学書院)2006年5月号掲載

 
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